著作権法の1番わかりやすい解説 第8回 著作者人格権の内容

著作者は、ある作品(著作物)を作ると、「著作権」(財産的な権利)と「著作者人格権」(精神的な権利)という2種類の権利をもつ、ということは、これまでに何度も出てきました。

第5回から第7回では、財産的権利である「著作権」について詳しく説明しました。

今回は、精神的な権利である「著作者人格権」の内容を説明します。前にも少し触れましたが、著作者人格権には、「公表権」「氏名表示権」「同一性保持権」「名誉声望保持権」の4つがあります。

それぞれ、説明していきます。

 

1. 公表権とは

著作者は、著作物(自分の作品)を公表するかどうか、公表するとして、いつ公表するかを自由に決定することができます。

これを「公表権」といいます(18条)。

たとえば、ある作品を制作したけれど、出来がイマイチだったのでお蔵入りにしていたとします。その作品を第三者が勝手に公表してはたまったものではないですよね。
公表するかどうかを自分が決めるというのは、まさに「人格」に基づく権利だといえます。

もっとも、未公表の著作物の著作権を第三者に譲渡した場合は、その第三者に、公表を同意したものと推定されます(18条2項1号)。

たとえば、僕が楽曲を制作して、その著作権をゲーム会社に譲渡した場合、僕はそのゲーム会社が僕の楽曲を公表することに同意したと推定されるわけです。

ゲーム会社としては、僕の曲をゲームで利用するために著作権を譲り受けたはずなので、当然といえば当然ですね。

公表権はとても重要な権利ですが、実際のビジネスでは公表することを前提に進めていくので、公表権が問題になることはあまりありません。

もっとも、最近、ASKAさんの未公開楽曲が勝手にテレビで放送されたとして、公表権侵害などで約114万円の損害賠償請求を認めた裁判例が出て、注目されました。

 

2. 氏名表示権とは

著作者は、著作物の利用に際して、氏名(クレジット)を表示するかどうか、どのようなクレジットにするかを決定することができます。

つまり、「著作物を利用するときは、きちんと自分が指定するクレジットを表示してくださいね」と言えるわけです。

これを「氏名表示権」といいます(19条)。

著作者は、「この作品については実名で、別の作品についてはペンネームで」というふうにクレジットを使い分けることもできます。また、「あの作品については実名もペンネームも出さない」ということもできます。

氏名表示権は、実際の現場でもけっこう問題になります。著作者(作家)側はできる限りクレジットを表示してほしいと思っていて、利用者側(その作品を利用する企業など)の認識と齟齬があるケースがあります。
事前に、どのような形で、どこまでクレジットを表示するかを合意しておくことが望ましいです。

もっとも、BGMとして楽曲を利用する場合にクレジットを表記することはできないですよね。このように、著作物の利用の方法によっては、公正な慣行に反しない限り、クレジットを省略できることになっています(19条3項)。

 

3. 同一性保持権とは

著作者は、著作物のタイトルと、その内容を、自分の意に反して改変されないという権利をもっています。

これを「同一性保持権」といいます(20条)。

たとえば、ある小説のタイトルを勝手に変更したり、その小説の内容の一部分を勝手に省略して出版した場合、「同一性保持権」侵害になります。

音楽でいえば、作曲家に無断で、楽曲に別アレンジを加えることも「同一性保持権」侵害だと考えられています。

作品の改変は「著作権」の支分権のひとつである「翻案権」の侵害と同時に、「同一性保持権」の侵害にもなるわけです。

ただし、著作者の意に反する改変でも、やむを得ない改変であれば、同一性保持権の侵害にはなりません(20条2項4号)。

たとえば、映画をテレビで放送する場合に、映画の内容の一部をカットしたり、途中で区切ってCMを入れたりする場合です。これは、本来の映画を切り取っているので同一性保持権の侵害になりそうですが、テレビ放送という制約上、やむを得ない改変に当たると考えられています。

著作者は作品に対して「こだわり」をもっているので、同一性保持権は実務上とても重要な権利で、同一性保持権を根拠にしたトラブルも多々あります。

 

4. 名誉声望保持権とは

著作者は、著作物を、自分の名誉や声望を害するような方法で利用されないという権利をもっています。

これを「名誉声望保持権」といいます(113条6項)。

ちょっとイメージをもちにくいと思いますが、CMに楽曲を利用する場合などに問題になります。たとえば、ベジタリアンの作曲家が、自分の楽曲をステーキ店のCMに使われるような場合、「名誉声望保持権」を主張することができます。

 

5. 著作者人格権が侵害された場合

以上のような著作者人格権が侵害された場合、著作者は、

① 差止請求(112条)

② 損害賠償請求(民法709条)

③ 名誉回復措置の請求(115条)

をすることができます。

損害賠償請求については、著作権の侵害の場合と同様、民法が根拠条文になります。ただし、損害額については、著作権侵害の場合と異なり、推定規定はありません。

名誉回復措置とは、新聞などに「お詫び 当社は著作者人格権を侵害してしまいました。」のような謝罪広告などを掲載することをいいます。

また、著作者人格権侵害については、刑事罰の規定もあります(119条)。「5年以下の懲役または500万円以下の罰金、または併科」というもので、かなり重いです。
最近では、魔改造したフィギュアをネットオークションなどで販売して逮捕された事例があります。

 

6. 著作者人格権の不行使特約

以上の4種類の著作者人格権は、著作者の精神的な権利なので、他人に譲渡することはできません(詳しくは第3回で説明しました)。

たとえば、僕が、自分が作った楽曲の「著作権」をゲーム会社に譲渡したとしても、「著作者人格権」は僕に残ります。

もっとも、ゲーム会社としては、「高木の楽曲を自由に利用したいけど、高木が著作者人格権を根拠にクレームを言ってくるかもしれないな」と、不安になるかもしれません。

そこで、「著作者は、著作者人格権を行使しないこと」という条項(著作者人格権の不行使特約)を入れる場合があります。

ただし、このような包括的な著作者人格権の不行使特約は無効であるという考え方もあり、確定的な判例があるわけではないのでグレーな状態です。

ですので、契約書では、できる限り具体的な利用方法を明示して合意することが望ましいと思います。

 

おわり

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